実 戦 ギ タ ー 合 奏 入 門

 

 

 

 

 

佐野正隆

 

 

 

 

教え上

TO

習い上

 

 

 

 

 

 

 先月号は音ミスについてのお話をしましたが、以前にこんな人がいました。“この音は濁っているのできれいに響く音に直しておきました。きっとこれで合っていると思います”。しかし、元の音が正しかったので、こんな説明をしました。“その部分だけを弾くと確かに和音が濁っていますが、その前後を続けて弾いてみますので聴いてみて下さい。一時的に濁った響きが聞こえますが、その後で音が融け合って、むしろきれいに聞こえるでしょう。これはわざと不協和音を作っておき、その後で協和音に移行していくことで、その和音がより美しく聞こえるという作曲上の1つのテクニックです。夫婦喧嘩もたまにする方がその後でより仲良くなれるというわけです。仲直りしないと困るけど、音楽の良いところは必ずハッピーエンドで終わることです”“あー、どおりで先生のところはよく夫婦喧嘩をするんですね”“・・・・・・・”。

このような間違いを犯さないように、音楽をたしなむ人は少なからず和声学を勉強しておいてほしいものです。理論とか和声学というとどうしても取っ付きにくいものですし、また市販されているそれらの本もけっこう難解なものが多いようです。しかし、少しでも興味を持っていただければ、こんなに面白いことはないと気付くと思います。では簡単に説明しておきますので、興味を持たれた方はより勉強して編曲や作曲にチャレンジしてみてください。まず、ハ長調のスケール「ドレミファソラシド」の中で半音の場所は、ミ・ファとシ・ドです。ギターでは1フレット分。それ以外は全音で2フレット分になります。ここで左手を広げて中指と人差し指だけをくっつけてみてください。そして、小指から順番にド・レ・ミ・ファ・ソと考えます(図1)。指がくっついているところが半音で、離れているところが全音です。そして、ドからひとつおきに見るとド・ミ・ソとなり、ドとミの間は全音2つ分、ミとソの間は半音1つと全音1つになっています。これがCのコードです。次にミをフラットにします。今度は図2のようにドとミの間隔が狭くミとソの間隔は広くなります。これがCmのコードです。同じ要領で小指のスタートの音をレにして考えるとレ・ファ・ラがDm、レ・ファ♯・ラがDのコードとなります。実際にDmとDのコードをギターで押さえて確かめてください。ファがシャープになるかナチュラルか、ひとつ違うだけで和音は明るくなったり寂しくなったりするのです。もうひとつ覚えておいて欲しいのがセブンスのコードです。C7はC(ドミソ)に第7番目のシのフラットの音を加えます。セブンスでは主音より第7番までの音の開きが、全音4つと半音2つであることが必要です。第7番めの音ということはドのひとつ下の音と同じことになるので、結局主音の全音下の音を加えればセブンスになるということです。例えばD7であれば、レ・ファ♯・ラにレの全音下のドを加えればよいのです。これもギターでコードを押さえて確認してみてください。DのコードのA弦のレの代わりにドを押さえればよいのです。いささか簡単ではありますが、このような和音の基礎知識を踏まえてから先に進んでください。Cはドミソでできていますが、これらの音を和声音と呼びます。音楽にはメロディーがあり、その和声があるわけですが、メロディーや伴奏などがすべて和声音で構成されているのではありません。和声音以外の音、いわゆる非和声音との2種類でできていると考えてください。そして、その非和声音の条件がありますので、これを覚えておくと楽譜のミスを発見できたり、コードのついていない曲に和声付をしたり、また編曲も作曲もしだいにできるようになってきます。名曲とはメロディーが魅力的であることが大きな条件ですが、それ以外にリズムの面白さ、和声付や和声進行の面白さ、そして非和声音の使い方の絶妙さなどにあるのです。ですから、名曲と言われる曲でもその編曲に冴えがなければそれまでですし、なんでもない曲でも名編曲を施せば、素晴らしい曲に変身します。さて、和声の話は長くなりますので、この続きは次号ということで。