実 戦 ギ タ ー 合 奏 入 門

 

 

 

 

 

佐野正隆

 

 

 

 

教え上

TO

習い上

 

 

 

 

 

 

 先月号ではリズムに関する初歩的なお話をしました。今月は音ミスについて考えていきたいと思います。アンサンブルのコンサートを聴いていてよく耳にするのが音ミスです。これには、その場で間違えた場合と最初から間違った音を覚えて弾いている場合の2通りがあります。前者の場合は耳障りな音が出たり、流れにそぐわないので誰が聴いてもすぐに分かりますが、後者の場合は自信をもって弾いているので、その曲を知らない人には結構分からないかもしれません。特にクラシック音楽の場合は細かい転調が多いと臨時記号がたくさん出てきますので、読譜ミスが起こりやすいのです。

それでは、もう一度前者から対処法を考えていきましょう。押さえのミスが多い原因の1つは基礎的な練習の不足でしょう。アンサンブルを教える場合、いつも全体のことばかり考えているのではなく、一人ひとりがどんなフォームでどんな指の動きをしているのかも知っていなければなりません。音ミスの原因のほとんどが左指にありますが、弦と指が垂直になっていない人はフォームを矯正する必要があります。また、指先で押弦していなかったり、左指がバタバタ動いている人もいけません。さらに重要なことは移動の仕方です。左の手のひらはネックと平行になったままで、完全に次のポジションまでに平行移動するように心掛けること。当然親指も形を変えずに一緒に動かないといけません。そして、今、何ポジションで弾いているのかしっかり意識できていることが大切です。右指に関する音ミスは弦の弾き間違いでしょう。これはタッチを深くすることが第一。また、和音の場合は左指を押さえたままにしておくことは基本中の基本ですが、スケールで左指が弦を変わる時には必ず押弦していた指を離さなければなりません。これをきちんと練習しておくと左指で押さえた弦に無意識に右指がいく癖がつきます

 次に後者に関してですが、この音ミスに気がついていないという問題は非常に重要なことであると思います。楽譜の読み間違いが起こるのは楽譜を読む時に、音高や音程を意識できていないことに他なりません。特に指揮者や指導者はこの能力が必要とされます。音符を見て、どんな音が出てくるか分かっていなければ、弾いた音が正しいかどうかの判断が自分自身でもできないはずです。音楽を長くやっている人は自然に身につくことなのですが、とりわけギターを弾いている人にこの能力が欠けているように思われます。それはギターにはフレットがあることによると思います。例えばヴァイオリンを弾く時には、どんな音が出るのか分かっていないと弾けないはずです。楽譜を見て音をイメージすることが大切ですが、ギターではフレットがあるために音をイメージしないで場所の意識だけで終わってしまいます。この地点で頭の中で音程を作り出すためのスイッチが切られてしまっているのです。せっかく音楽を楽しむ目的でやっているのに、その楽しみの部分を捨てて指の運動だけになっているわけです。この感覚を鍛えるためには、音階を歌う練習やドの音から上下に、あらゆる音程をとれるような練習をしてください。また、楽譜を見てギターを弾かずに歌ってみてください。後でギターを弾いて確認しておきます。そしてギターを弾く時には、音のイメージを作りながら弾くことです。また、自分の弾いている曲の、特にメロディーを階名で歌えるようにするのもよいでしょう。アンサンブルの指導をする時、すべてのパートを一度に聴き取らなければなりませんが、これはたいへんむずかしいことです。最初のうちはひとつのパートだけをしっかり聴き取り、何回も練習しながらすべてのパートをチェックしていきます。馴れてくると、同時に多声部の音を聴き取ることも可能になってきます。聖徳太子は一度に何人もの話を聞き分けたそうですが、これは大天才でも不可能なことでしょう。しかし、いくつかの声部の音を同時に聴き取ることは訓練さえすれば凡人にもできることです。