実 戦 ギ タ ー 合 奏 入 門

 

 

 

 

 

佐野正隆

 

 

 

 

教え上

TO

習い上

 

 

 

 

 

 

 先月号では指導者が棒を叩きながら練習を進めていくお話をしましたが、教わる側もこの練習の間に正しいリズムを覚えてしまう努力をしてください。しかし、必ずリズムをうまくとれない人が1人や2人はいるものです。こういう人はだいたい楽譜を読むのが気になったり、左指を押さえる場所を迷っているためにリズムにのれない場合がほとんどです。教える側にとっていちばん苦労するのがこういった人を指導することです。リズム感が悪い人ほどリズムを頭で理解していて、“この音はあの音の後で弾く”とか“ここはもう少しは速め”というようなものの考え方をします。リズムをとれている人でもイメージでなんとなく理解している方が多いようで、“この音符はこんな感じ”と結構アバウトです。しかし、アンサンブルでは“だいたいこんなものだろう”という考え方は通用しません。独奏ですとメロディーが速くなれば伴奏も一緒についてきますので、案外演奏者自身が自分のリズム感の悪さに気が付いていない場合が多いようです。これがアンサンブルでは、うまくいかなかった福笑いのように時には目と鼻がひっくり返ってみたりします。そうなると笑い事では済まされないのが指導者です。今度は指導者の目が吊り上がって、福笑いさながらの顔になってしまいます。こんなことがおきないように、曲を練習する前に譜例のようなリズムを全員で同時に弾いてリズム感を揃える練習をしてください。メトロノームを使っても構いませんが、できるだけ指導者が叩く4分音符に合わせ、それに対するさまざまなリズムを即座にとれるようになってください。特にこれから練習する曲に良く出てくるリズムを取り出して練習するとより効果的です。さらに厳密にいうとリズムの抑揚も合わせないといけないのですが、実際にはこれを理解できていない人がほとんどだと思います。しかし、音楽的な演奏をするには絶対に必要なことですので、よく理解していただきたいと思います。まず。4分音符の音が次の拍まで目一杯伸びるようにリズムを感じてください。音の伸びを感じている間は頭が上に上がり、次の拍で下に落ちてきます。このときの頭の上がる時間と速度がリズムの感じ方によって変わってきます。例えて説明すると、同じ速さで歩いているとしてもすり足で歩く時と普通に歩く時、またスキップのように飛び跳ねて歩く時ではリズムの抑揚が違うことが分かると思います。当然すり足はレガートで、スキップは楽しい感じになります。このように私たちが持っている多種多様の感情をさまざまなリズムの抑揚として表すのです。これが音楽になくてはならない最も大切なな表現です。メンバー全員でこのリズムの感じ方を揃えるには、やはり指導者の棒を見ることがいちばん手っ取り早い方法です。少人数の場合はお互いの体の動きや音の感じでリズムの抑揚や感情を感じとることができますが、全員がこれらを理解できるレベルに達していなければなりません。実際にはこのレベルに到達しているグループは少ないと思います。しかし指導をする人だけでもこれらを理解していることによって残りの人達を導いていけばよいわけで、これが“指導をする”という意味なのです、教えるという行為があって、次に上達していくという結果が出なければ意味がありません。指導者がより音楽的指揮をすれば、演奏者はその棒を見ることによって曲のリズムや表情を理解できるようになっていくのです。同じグループでも指揮者が替わると出てくる音楽もがらりと変わってしまうのもうなずけると思います。指導する人にとってみれば責任重大ですが、その曲のリズムの抑揚はどうなのか、メロディーはどんな表情で歌うのか、デュナーミクは、アーティキュレーションは、また、ひとつひとつの和音はどんな印象なのか。など、さまざまなことを感じ取って指揮棒に表せるように努力をして欲しいと思います。