実 戦 ギ タ ー 合 奏 入 門

 

 

 

 

 

佐野正隆

 

 

 

 

教え上

TO

習い上

 

 

 

 

 

 

 先月号では選曲するところまでお話をしました。曲が決まれば個人個人でスコアからパート譜を作ります。曲を覚えるまではスコアを見て練習した方が他のパートのこともよく分かって良いのですが、なるべく早い時期にパート譜で練習するようにしてください。スコアだとめくる度に演奏がストップしますし、何より自分のパートを正確に弾くことに集中すべきです。また、コンサートの前に突然パート譜に替えると目先が変わってどこを弾いているのか分からなくなることもよくあります。次に個人練習をしてからメンバーが全員集まって練習するのですが、教える側にとってここが第一の試練になります。全員同じようなレベルで同じように練習をしてくれば問題はないのですが、何人もいれば十人十色で、言われた通りにメトロノームを使って練習してくる者もいれば、適当なリズムや想像もつかない運指で弾いてくる人もいます。ここで弾ける人に合わせて練習を続けると弾けていない人は落ちこぼれてしまいます。ある日突然来なくなってしまいます。逆に弾けない人に合わせてスローペースで練習をしていくと、練習をよくしてきた人は皆と合わせることにおもしろ味を感じなくなってしまいます。これを解消するには事前にメンバーの性格やレベルをよく掴んでおいて、各パートにリーダー的な人を置いておくことです。弾ける人が弾けない人の面倒をみるようにすれば、教える方も少し楽ができるという計算になります。そして、全員で練習する時には低いレベルからある程度のレベルまで織り交ぜて、すべての人がその日の練習で得るものがあるようにすることです。少しでもロスを起こさせず早く仕上げたい時には、最初から運指を書き込んだパート譜や見本演奏のテープを作っておけばよいでしょう。

具体的な指導の仕方として、教える人は、まず“たたき棒”を用意してください。たたき棒と言っても弾けない人を叩くのではなく、メトロノームを使う代わりに譜面台や机を叩いてリズムをとるために使います。楽器店で“たたき棒をください”と言っても売っていませんのでご注意。よく指揮棒で叩いている人がいますが、木製だとすぐ折れてしまいますし、最近の合成樹脂? でできているものだと叩いてもあまり音が出ません。竹製の棒を使うといちばん良いと思いますが、身近なものでは“さいばし”などが良いでしょう。私もさいばしを使っていますが、そのままだと恥ずかしいのでナイフで削って正体を分からなくして使用しています。この棒の叩き方が非常に大切で、うまくいくと習う方にも教える方にも大きなメリットが待っています。テンポの速い曲をゆっくり練習する時にはなるべく細かいリズムで叩きます。例えば4分の4拍子の曲でも最初のうちは16分音符や8分音符で叩いて細部にわたって正確なリズムで弾けるようにする必要があります。それらができると最終的には4分音符で叩くのですが、リズムの躍動と音の伸びを感じながら叩くと指導をする時の手の動きと基本的には同じになっています。棒の動きはボールが地面に落下して跳ね返るのと同じような動きになることが大切で、決っして叩きつけるのではないということを覚えておいてください。こういう具合に指導をしながら、ちゃっかり指導の練習をしているわけです。全員がリズムをとれて弾き慣れてきた頃に、たたき棒を指揮棒に持ち替えていよいよ本格的なアンサンブルの練習に入ります。